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爆走!犯罪国家横断デス・レース!

あらすじ

犯罪率が300%を超えた凶悪犯罪国家メナス。
これに対し、政府が出した対策はデス・レースを開催するというものだった。
全国から選ばれし警察官たちが違法改造パトカーに乗って国家を横断し、いかに多くの国民を殺したかを競う。
国民を殺せば殺すほど犯罪率が改善されるからだ。

主人公LEXはデス・レース参加選手の一人。優勝候補とされている凄腕警官だった。
しかし、スタート直前に彼は気づく。同じ参加選手の中に、見知った顔がいるということを。
それはなんと、彼が追っている凶悪殺人鬼であった!
なぜか指名手配されている殺人鬼が警察服を着てレースに参加しているのだ。
だがすでにレースは始まってしまった。
誰にも止められない死のレース。
果たしてLEXは生き残ることができるのか?
そして彼の背後で蠢く陰謀とは―――?

 
 
   

そこで開かれたのがこのデス・レースだった。広大なメナスを東から西へ横断し、全国に生息する国民を片っ端から殺害する。
これは見せしめの公開処刑で、こうすることで国民に恐怖を与え、犯罪率を抑えようというのが目的だった。
現警察署長であるマーカス・ドーソンはこれに関して次のように述べている。
「我々がいかに邪悪な組織か、国民に思い知らせるのだ」

第一話

「空前のノンフィクション・バラエティ、デス・レース2080!チケットは来月より販売開始!」 浮浪者のポータブルTVから、派手な広告が流れている。 段ボールやボロ布に囲まれたその男は、黒ずんだ手で機器を乱暴に叩き、ザラつく映像を見ようと必死になっている。

そこは犯罪国家メナスの市民街。 あたり一帯に広がるのは、コンクリートの墓標のようにそびえる廃ビル群と、無数の違法な露店だった。そこで売買されているのは薬物、改造した銃器、盗品まがいの電子パーツ――この街で求められるものはどれもろくでもないものばかりだ。 ただ、そうして表通りでやっている分にはまだマシだった。人目を避けて脇道に入ればそこは地獄。当たり前のように転がる人や動物の死骸。腐臭を孕んだ空気が、湿った風となって建物の間を抜ける。

今も路地裏の、光も届かない場所で犯罪行為が行われていた。血走った目の男がボロボロの服の女性を組み伏せてレイプしている。女の方は犯されながら興奮気味に笑っていた。 女は腕に注射の跡がいくつもあり、その狂気も薬物的な作用であることがわかる。付近の住民がその現場を目撃したが、全員見なかったことにしてその場を去った。どう見ても彼らは狂っている。そんな相手に何をすることができよう。下手に関わって怪我をすることほど、馬鹿な話はない。 雄叫びを上げながら強姦する男。狂った声で笑う女。見て見ぬ振りをする住民たち。 これがメナスの日常である。 これはこの地域だけ特別に治安が悪い、というものではない。殺人、薬物、強盗、強姦、人身売買。この国ではどこでもこれくらいのことは起きている。

「俺は狂ってない!俺は……狂ってない!」 男が何かを喚きながら激しく女を犯している。女は男が何かを喋るたびに大ウケして笑う。 ただ、そうやって彼らが交尾を始めてから10分ほどが経過したその時だ。 ブォン!ブォンブォォン! 突如、けたたましいエンジン音が鳴る。 そして次の瞬間!パッとライトがつくと、強姦男の全身をハイビームが照らし出した。 なんだ?と彼がその方を向くと、そこにあるのは黒光りする1台のスポーツカー。いや、それはスポーツカーにしてはあまりにも攻撃的すぎる。 真っ黒な車体に、流線型のフォルム。側面についた鋼鉄ブレードは明らかに人体を破壊するためのものだ。 そして、その車について最も特徴的なのが先端についた黒光りする衝角。獰猛なサイを思わせる大きなツノが前方に取り付けられていた。それに衝突すればどんな物でも豆腐のように潰されるだろう。まさに殺人マシン、という表現が合っている。

「なんだてめえコラ!やんのか!ああぁ?」 男は女と共に立ち上がり、下半身を丸出しの状態で車と向き合った。「これは俺の女だ!邪魔すんじゃねー!」 血走った目をしながら運転手に向かって叫ぶ男。

だが、マシンは何も動かない。「なんだてめえ!どっか行けよ!」と怒れる男。 女の方はもはや車すら眼中にないのか男の肩に抱きつくと「もう一回やろー」と笑いながらキスをする。 男はブチギレている。 女は男にキスをしまくる。

BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!

次の瞬間だった。 その鋼鉄の殺人マシンは、いきなりトップスピードで男女の方へ突っ込んでいった。「なんだてめえやんのかコ———」 ボグシャッ! 彼らはビリヤードのように見事に跳ね飛ばされ人体がバラバラになって死亡!男女の残骸が空から地面にボトボトと降り注ぐ。 狂走マシンはそのまま路地裏を抜け、表通りを快走し、一瞬にして街を駆けていった。後に残るのは一抹の風と焼け焦げたタイヤ跡のみ。

その後、メナスの街は再び静かな眠りについた。 人々が息を潜めて暮らす変わらない日常へと。 乾いた夜風に煽られ、どこからか広告の音が聞こえてくる。 「空前のノンフィクション・バラエティ、デス・レース2080!チケットは来月より販売開始!」

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